家族や周りの人が認知症となってしまったとき、
介護や日々の関わりの中で、悲しさやもどかしさ、
腹立たしさなどの感情が湧いてくる場合もあるかと思います。
認知症の人との関わり方の基本は、
認知症が病気であるということをしっかりと理解したうえで接することが重要です。
認知症の人の行動にも意味があることを理解し、
なぜその行動をとるかということを考えながら接してみましょう。
病気への理解と、その人への愛情をもって接することで、
心にもゆとりを持って関わっていくことができると思います。
■認知症の種類と症状
認知症には、「アルツハイマー型」「脳血管性型」「レビー小体型」
「前頭側頭型」などの種類があり、症状には少しずつ異なりがあります。
症状には大きく分けて、「中核症状」と「周辺症状」の2種類があります。
○中核症状
中核症状は、脳の機能低下、脳細胞の萎縮等の影響により以下のような症状がみられます。
・記憶障害
・見当識障害
・理解力、判断力の障害
・実行機能障害
このような障害から、認知症の人は自分の行動に不安を感じ、
そのために落ち着かない行動をとったり、同じ質問を繰り返すようになります。
○周辺症状
脳の機能低下に心理的状況が加り、以下の症状があらわれます。
・うつ状態
・徘徊
・幻覚や妄言
・暴言、暴力
・不潔行為
■認知症の人の考え方・感じ方
認知症の人は、自分のできないことが増えてくることに対し、
不安や焦りなどを感じてしまいます。
その状態の中で、どのような行動を好み、嫌がるかを知ることが重要です。
○認知症の人が好む行動
・安心できる場所で過ごす
・安心できる人と関わり・繋がりを求める
・自分がやりたいこと、できることは積極的におこないたい
・得意な事や、昔の栄光を周りの人に認めてもらいたい
○認知症の人が嫌う行動
・いつもと違った環境で過ごす
・いつもと違った人と関わりを持つ
・自分自身、行動を否定される
・新しいことをしなければならない
■認知症の人と接する時に気を付けること
認知症の人は、自分の好まない行動を強要されたり、
孤独感を味わう、プライドを傷つけられると、周辺症状が発生しやすくなってしまいます。
なるべく慣れた環境のなかで、自分の生活リズム、
ペースにあわせて生活できるように配慮することが大切です。
また、近年では、「バリデーション」や「ユマニチュード」といった、
認知症の人への接し方も有効と考えられています。
○バリデーション
認知症の人の感情に重点をおいた対話・コミュニケーション方法です
・認知症の人の抑えている感情や欲求が表にでるように手助けする
・認知症の人が抱えていた問題を解決できるよう支援する
認知症の人の言動や行動を受け入れ認めることで感情の状態が良好となり、
心を通わせることが可能になると考えられています。
○ユマニチュード
知覚・感情・言語からなるあらゆる感覚を活用したコミュニケーション方法です。
見る、触れる、話しかける、立つように支援する、から成っています。
・見つめる 認知症の人は視野が狭くなっているため、同じ高さから目線を合わせ、
平等な関係性や誠実さを伝えます
・触れる ふれあいやスキンシップを通して安心感を与えます
・話しかける ゆっくりと優しく言葉で話しかけることで、
自分の存在を認識する機会につなげます。
・立つように支援する 立つことにより自分が存在しているという自覚を強く持つことができます。
また、筋力低下や骨粗粗しょう症の進行を防ぎます
■介護疲れしないために
認知症の人を介護する場合、想像以上に心身の負担が大きく、
介護する人が疲れ切ってしまうケースが多くみられます。
介護疲れをしないために、全てを一人で抱え込まず、
家族や親戚に相談してみることをお勧めします。
また、保険センター、地域包括支援センター、
在宅介護支援センターなどの専門機関に相談することも大切ですし、
自宅で介護をする場合は、訪問介護を利用すれば、家族の負担を減らすことができます。
また、通所を中心に、希望に応じて短期の宿泊も利用できる「小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。
家族の状況や要介護度合い、本人の意思などを確認しながら、
無理のない介護を行えるようにすることが重要です。
当院でも認知症デイケア『SORA』を設けるなど、認知症治療・ケアを行っておりますので、
認知症介護にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
なお、当院にご来院される場合は、初診の患者様は問診や診察に時間を要するため、
診察を予約制とさせていただいております。
また、お電話にて看護師や心理士がお話をお伺いすることもできますので、
ご来院・ご相談の際は、まずはお気軽にお電話にてお問い合わせください。